2004年JAF全日本ジムカーナ選手権が栃木県ツインリンクもてぎ、スーパースピードウェイにて行われた。コースは、ジムカーナでは初の試みの最大斜度10度からなるオーバルを使用した超高速パイロンコース。2003年度ボディ補強なしのコンセプトでシーズンを戦い抜き、シリーズチャンピオンを獲得した山野哲也は、さらにハイスピード化していくジムカーナに挑んでいくべく選択した車両は1999年以来5年ぶりのホンダNSXとなった。マシンカラーは、2004年度メインスポンサーである「EXEDY」カラーであるピンクを基調としたマシン。マシン製作およびチーフメカニックは「チャレンジャーKANTO」の岩井照樹。現地メンテナンスを行うのは、島村琢磨と昨年度と変わらないチーム体制。
今シーズンは同時に参戦が決まっている全日本GT選手権とのバッティングが多いため、山野は限られた環境の中でも常にベストを尽くし、結果を恐れずに目標の11度目のシリーズチャンピオンを目指し前進していく。 13日公開練習日。快晴。新シーズンの始まりを誰もが好スタートを切ろうと、パドック内は活気と熱気にあふれていた。N3クラスが始まる。勢いよく加速した山野NSXはスタート直後に設けられた360度ターンをきれいにクリア。続くバンクに設けられたパイロンを超高速で巧みにすり抜ける。最終区間のサイドターンセクションの8の字も鮮やかに決め、1分50秒346でコースを駆け抜け、トップタイムをマークした。コースが変更される翌日の決勝に備え、余念ないマシンメンテナンスが夜遅くまで、岩井メカ、島村メカの手で行われていた。
14日決勝日。快晴。続々と観客がスタンドやパドックに訪れる。ひときわ目立つ真新しいスーツ姿の山野は念入りに広いオーバルコースの慣熟歩行を行う。N3クラス、ヒート1。着々とRX-7勢が上位を占めていた。ここまでのトップは有田光徳RX-7の1分57秒057。山野NSXはヒート1のスタートラインに立つ。最初の関門、360度ターンから3速全開でバンクを上り下りのスラローム。あわやスピンか！と思えるほど、大きくリヤを振り乱したが、卓越したドライブテクニックで修正。次なるセクションは4速全開、170キロからタイヤスモークをあげながらフルブレーキング！360度ターンをしっかりと決める。GTドライバーならではのブレーキングとジムカーナドライバーならではのサイドターンをフルに発揮できる場所となる。
最後は最大の難所、8の字セクション。山野NSXは、軽やかにサイドターンを決めて、ゴールラインを切った。タイムは1分53秒611。2位との差を3秒446と圧倒的に差をつけ、会場は一気にヒートアップ。しかし山野はこのタイムに満足することなく、普段は行わない昼の慣熟歩行を行っていた。 ヒート2がスタート。ライバル勢が次々とオーバルに挑むが、誰も山野NSXのタイムを抜くことはできない。田原憲RX-7が中間タイムを塗り替えながら、最終セクションに入ってきた。しかし1分53秒941で山野にあと一歩及ばず。残るは山野NSXのみ。360度ターンはヒート1よりブレーキングをさらに遅らせ、タイムを稼ぐ。前半のパイロンセクションでは、オーバーステアを出さない走りで無駄のないスラロームを演じている。いよいよ後半のパイロンセクションとなった。しなやかな走りでパイロンの間を疾走、そしてゴール！ 観客も大いに沸き、熱くなったサーキット。山野はマシンから降り、タイムのアナウンスを待つ。勝利を確信した山野は、スタンドに大きく手を振り、ファンサービスをしながら、パドックに戻っていった。このヒート2の山野NSXのタイムは1分53秒581。レース後、お互いを称えあう山野と岩井メカ、島村メカの姿が印象的だった。
「今回NSXを入手してから、急ピッチでマシン製作を行った。完成したのがこの全日本戦の週となり、マシンセッティングも完璧ではないなか、ホームコース的存在のツインリンクもてぎで優勝できたことに対して、非常に嬉しく思っている。また今季、メインスポンサーとなったEXEDY社、マシンを作りあげてくれた岩井、島村両氏、そして応援してくれている全てのスポンサー各社とファンのみなさんに感謝したい。GT選手権と共に最大限の結果を残せるように努力します。」
